しいたけパウダーは、加熱する料理なら「最初に入れるもの」と決まっているわけではありません。
加熱する前、調理の途中、仕上げ、そして加熱しない料理。
どのタイミングでも使うことができます。
ただし、加えるタイミングによって、しいたけの成分が料理の中に広がる過程や、香り・うま味の感じ方は変わります。
では、いつ加えると、どのような使い方になるのでしょうか。
まず、しいたけは加熱で変化する
しいたけのうま味や香りは、加熱によって変化します。
特に乾しいたけでは、乾燥と水戻し、加熱の過程がグアニル酸の生成や分解に関係します。そのため、「加熱すればするほど、必ずうま味が強くなる」という単純な関係ではありません。
また、しいたけの風味は、うま味成分だけでなく香り成分によってもつくられています。
以前の記事「しいたけのうま味はなぜ加熱すると変わる?」では、グアニル酸を中心に、乾燥・水戻し・加熱によってしいたけのうま味が変化する仕組みを紹介しました。
ここではそこから一歩進んで、料理のどの段階でパウダーを加えるかを考えてみます。
加熱する前に加える
料理を作り始めるときに、しいたけパウダーを加える方法です。
例えば、煮物を作るための水にパウダーを加えてから肉や野菜を煮る、炊き込みご飯の具材や調味料と一緒に加える、といった使い方です。
この方法の特徴は、調理の早い段階から料理全体にしいたけをなじませやすいことです。
例えば、肉を煮る場合、
水 + しいたけパウダー → 肉を加えて煮る
という順番にできます。
この場合、しいたけ由来の成分が煮汁に広がり、肉から出てくるうま味成分などと同じ料理の中で組み合わさります。
「肉に直接パウダーを付けなければ、うま味の相乗効果が起こらない」ということではありません。
しいたけのGMPと肉などに含まれるIMPは、料理の中で一緒になることで、うま味の相乗効果を考えることができます。グルタミン酸とIMP・GMPの組み合わせによるうま味の相乗効果は、さまざまな研究で確認されています。
こんな使い方に
- 煮物
- スープ
- 味噌汁
- 炊き込みご飯
- カレー
- 煮込み料理
料理全体にしいたけのうま味をなじませたいときに向いています。
調理の途中に加える
次は、料理を作っている途中で加える方法です。
例えば、肉や野菜を炒めている途中にパウダーを加えたり、煮込み料理の途中で加えたりします。
最初から加える場合との大きな違いは、しいたけを加える時点ですでに料理の味や香りができ始めていることです。
例えば肉を煮る場合、
肉を煮る → 途中でしいたけパウダーを加える
という順番です。
肉からうま味が出たところにしいたけを加えるため、結果として料理の中で肉のうま味としいたけ由来の成分が組み合わさることになります。
一方、最初からパウダーを加えた場合とは、料理の中でしいたけが加わるタイミングや広がり方が異なります。
ただし、「途中で加えたほうがうま味の相乗効果が強くなる」とまでは言えません。
うま味の相乗効果は、成分が同じ料理の中で組み合わさることによるものだからです。
タイミングによって違いが出るとすれば、成分そのものの相乗効果だけでなく、香りの残り方、料理へのなじみ方、味を感じるタイミングなども関係すると考えたほうがよいでしょう。
仕上げに加える
料理が完成する直前や、火を止めてから加える方法です。
この使い方では、加熱時間を短くすることで、しいたけを加えた後の風味を比較的そのまま感じやすくすることができます。
例えば、
- 味噌汁の仕上げ
- スープの仕上げ
- 炒め物
- パスタ
- 卵料理
- ポテトサラダ
などに少量加える方法があります。
「料理全体にしいたけをなじませる」というより、
最後にしいたけのうま味や風味をひと足しする
という考え方です。
冷たい料理・加熱しないものに加える
しいたけパウダーは、加熱しなければ使えないものではありません。
冷たい料理や加熱しないものに加えることで、加熱による風味の変化を加えずに、しいたけの風味を取り入れることもできます。
例えば、
- ドレッシング
- ポテトサラダ
- 冷奴
- 和え物
- ソース
- バニラアイスなどのデザート
などです。
この場合は、加熱によってうま味や香りが変化する過程を経ないため、加熱料理とは違った風味の感じ方になる可能性があります。
特に少量を使えば、しいたけそのものを強く感じさせるのではなく、料理や食品全体の風味の印象を変える使い方もできます。
「いつ入れるのが正解?」ではない
ここまで見ると、
加熱前 → 料理全体になじませる
調理中 → 料理の途中からうま味・風味を加える
仕上げ → しいたけの風味を最後に加える
加熱しない → 加熱による変化を加えずに使う
という考え方ができます。
ただし、これは「加熱前が一番うま味が強い」「仕上げが一番香りが強い」といった順位をつけるものではありません。
料理の種類やパウダーの量、水分、加熱条件によって感じ方は変わります。
むしろ、同じ料理で加えるタイミングを変えて比べてみることに面白さがあります。
例えば、肉を煮るなら?
違いを分かりやすくするために、肉を煮る料理で考えてみます。
① 最初から加える
水 + しいたけパウダー → 肉を入れて煮る
しいたけを料理の早い段階から全体になじませる方法です。
煮汁を通して、肉としいたけのうま味を一緒に楽しむことができます。
② 肉を煮てから加える
肉を煮る → しいたけパウダーを加える
肉のうま味が出たところに、しいたけを加える方法です。
しいたけを最初から加えた場合とは、風味の加わり方や感じるタイミングが変わる可能性があります。
③ 仕上げに加える
肉を仕上げる → 火を止める → しいたけパウダーを加える
しいたけの風味を最後に加える使い方です。
同じ肉料理でも、3つの方法で食べ比べてみると、違いを感じられるかもしれません。
ここで重要なのは、①だけが「うま味の相乗効果が起こる方法」ではないということです。
②や③でも、しいたけ由来のGMPなどと肉由来のうま味成分が料理の中で一緒になれば、うま味の組み合わせは考えられます。
違いを生むのは、いつ成分が料理に加わるか、どのように料理全体になじむか、そして香りや味をいつ感じるかという部分です。
料理に合わせてタイミングを変える
しいたけパウダーの使い方を考えるとき、
「しいたけパウダーは○分加熱する」
と決める必要はありません。
むしろ、
料理全体になじませたい → 加熱前・調理中
うま味を途中から補いたい → 調理中
最後に風味を足したい → 仕上げ
加熱による変化を加えたくない → 冷たい料理・加熱しないもの
というように、目的からタイミングを選ぶほうが分かりやすいでしょう。
同じしいたけパウダーでも、加えるタイミングを変えるだけで、料理の中での役割を変えることができます。
「何と合わせるか」と「いつ加えるか」
しいたけパウダーの使い方を考えるときは、
何と組み合わせるか
と
いつ加えるか
の2つを分けて考えると、より分かりやすくなります。
肉、魚、野菜、味噌、卵など、何と組み合わせるかによって、うま味や風味の組み合わせが変わります。
そして、加熱前、調理中、仕上げなど、いつ加えるかによって、しいたけが料理になじむ過程や、風味を感じるタイミングが変わります。
この2つを組み合わせれば、しいたけパウダーの使い方はさらに広がります。
「正しい使い方」を一つ決めるのではなく、
今日は料理全体になじませる。
今日は最後に風味を足してみる。
今日は加熱しないものに少量試してみる。
そんなふうに、料理に合わせて使い方を変えてみるのも、しいたけパウダーの楽しみ方です。


