しいたけの培養温度とCO₂濃度はどこまで必要?研究でわかった適温と換気

 菌床しいたけの培養期間では、菌床から発生する熱や二酸化炭素(CO₂)によって、施設内の環境が少しずつ変化します。そのため、温度やCO₂濃度を適切に管理することが重要になります。

 特にCO₂濃度を下げるためには換気が必要ですが、外気温が高い時期に換気を行えば、せっかく冷房した空気を外へ排出することになります。反対に冬場は、暖めた空気を換気によって外へ逃がすことになります。

 つまり、CO₂濃度を必要以上に低く保とうとすると、冷暖房を行いながら換気するという非効率な空調になってしまいます。

 では、しいたけの培養では、実際にどの程度の温度とCO₂濃度が必要なのでしょうか。

 今回は、菌床しいたけの培養環境について、温度を20~28℃、CO₂濃度を1,700~4,500ppmの範囲で変化させ、収穫量への影響を調べた研究を紹介します。

しいたけの培養に適した温度とCO₂濃度は?

 今回紹介する研究では、温度を20、22、24、26、28℃の5段階、CO₂濃度を1,700、2,500、3,500、4,500ppmの4段階に設定して、菌床しいたけの培養環境を比較しています。

 その結果、温度については22~24℃が収穫量を確保しやすい条件となりました。

 一方、CO₂濃度については、1,700~4,500ppmの範囲では、収穫量に明確な差が認められませんでした。

 ただし、これは「CO₂濃度を4,500ppmにするのが最適」という意味ではありません。あくまで、この研究で比較された範囲では、CO₂濃度による収穫量の差が確認されなかったという結果です。

しいたけの培養温度は22~24℃が適していた

 研究では、20、22、24、26、28℃の5つの温度条件で菌床を培養しました。

 培養後にしいたけを発生させたところ、発生3日目の発芽数は22℃で最も多く、1菌床あたり100個以上となりました。20℃と24℃では約80個でしたが、この3つの温度区の間には統計的な有意差はありませんでした。

 一方、26℃では約10個、28℃では約2個まで大きく減少し、24℃以下の試験区と比較して有意に少なくなりました。28℃では、発芽がまったく見られない菌床もありました。

 最終的な収穫量を見ると、20~24℃ではいずれも1菌床あたり約550gで、収穫個数も約40個となりました。

 これに対して26~28℃では、収穫個数が約10個、収穫重量も約200gまで低下しました。

 この結果から、この研究条件では26℃以上の高温が収穫量に不利に働いたことが分かります。

しいたけのCO₂濃度は1,700~4,500ppmで収穫量に差がなかった

 しいたけの菌床は呼吸によってCO₂を放出するため、施設内の菌床数が多くなるほどCO₂濃度は上昇します。

 一般的な栽培管理では、施設内のCO₂濃度を一定以下に保つために換気を行うことがあります。しかし、CO₂濃度を下げるために換気を増やせば、その分だけ冷房や暖房によって調整した空気も外へ排出することになります。

 そこで、この研究では施設内のCO₂濃度を1,700、2,500、3,500、4,500ppmの4段階に設定して比較しました。

 その結果、発芽数、収穫個数、収穫重量のいずれについても、4つのCO₂濃度区の間に有意差は認められませんでした。

 また、3,000ppmを超える3,500ppmや4,500ppmの条件でも、収穫されたしいたけの量や大きさに明らかな異常は確認されず、傘の奇形や軸の徒長も確認されませんでした。

 つまり、この研究の条件では、CO₂濃度を3,000ppm以下に維持しなくても、4,500ppmまでの範囲では収穫量への明確な悪影響は確認されなかったということになります。

4,500ppmがCO₂濃度の「最適値」という意味ではない

 ここで注意したいのは、今回の研究が「CO₂濃度は4,500ppmが最適」と示したわけではないことです。

 比較されたのは1,700、2,500、3,500、4,500ppmの4条件です。この範囲では収穫量に有意差が認められなかった、という結果になります。

 したがって、4,500ppmを超えても問題がないことや、さらに高いCO₂濃度にすると収穫量が増えることまでは、この研究から判断できません。

 この点は、実際の栽培管理に研究結果を利用するときに重要です。

しいたけの培養温度はなぜ22~24℃が適していたのか?

 では、なぜ26℃以上では収穫量が大きく減少したのでしょうか。

 その理由の一つとして、菌糸の伸長と菌床の褐変化の関係が考えられます。

20~24℃では収穫量に大きな差がなかった

 20~24℃では、最終的な収穫量はいずれも1菌床あたり約550gとなり、大きな差は見られませんでした。

 一方で、20℃では培養中の菌床袋の中でしいたけが発生する「袋内発生」が起こった菌床もありました。

 袋内で発生したしいたけは、栽培袋に接触することで変形し、出荷に適さなくなる場合があります。

 そのため、20℃は培養そのものができない温度ではありませんが、培養中の発生を避けるという点では、必ずしも好ましい温度とはいえません。

26~28℃では収穫量が大きく減少した

 26℃では収穫量が約200g、28℃ではさらに発生数が少なくなりました。

 興味深いのは、高温にすると菌糸そのものは速く伸びることです。

 この研究でも、26℃では22℃より菌糸が広がるまでの日数が約5日短くなりました。

 菌糸が速く広がるのであれば、収穫までの期間も短くなりそうに思えます。

 しかし、実際には26℃以上で収穫量が大きく低下しました。

高温では菌糸の伸長が速くても収穫量が増えるとは限らない

 この結果から分かるのは、「菌糸が速く伸びること」と「良好な発生につながること」は同じではないということです。

 菌床しいたけでは、菌糸が菌床全体に広がるだけでなく、その後に菌床表面が褐変化し、発生に向けて菌床が仕上がっていく過程があります。

 今回の研究では、高温条件になると、この後半の過程に違いが見られました。

菌糸の伸長と菌床の褐変化では適した温度が異なる

 菌糸が菌床全体に広がった後の褐変化は、26℃以上になると遅くなりました。

 26℃では菌床全体が褐変化するまでに約65日を要し、28℃では培養85日目になっても7~8割程度しか褐変化していませんでした。

 つまり、

「菌糸を早く伸ばす温度」と「発生に向けて菌床を仕上げる温度」は、必ずしも同じではない

ということです。

 研究では、菌糸の伸長期間には26℃付近、その後の褐変化が始まってからは22~24℃にすることで、培養期間を短縮できる可能性も示されています。

 ただし、26℃は褐変化を阻害する温度域と隣接しているため、温度管理には注意が必要とされています。

20℃では袋内発生にも注意が必要

 20℃では、培養中の菌床袋の中でしいたけが発生した菌床もありました。

 袋内発生が起こると、しいたけが栽培袋に接触して変形することがあります。

 そのため、単純に「温度は低いほど安全」と考えるのではなく、収穫量だけでなく、培養中の発生なども含めて温度を考える必要があります。

 今回の研究では、最終的な収穫量や袋内発生などを総合して、22~24℃が培養施設の温度として適していると結論づけています。

しいたけの培養に必要なCO₂濃度は?

 しいたけの培養施設では、菌床が呼吸によってCO₂を放出するため、施設内のCO₂濃度は時間とともに上昇します。

 では、CO₂濃度はどこまで低くする必要があるのでしょうか。

CO₂濃度3,000ppm以下でも収穫量に差はなかった

 今回の研究では、1,700、2,500、3,500、4,500ppmの4段階で比較しました。

 その結果、これらの条件では、発芽数、収穫個数、収穫重量のいずれにも有意な差は認められませんでした。

 つまり、少なくとも今回の試験条件では、3,000ppmを少し超えたからといって、収穫量が直ちに低下する結果にはなりませんでした。

CO₂濃度4,500ppmでも収穫量やしいたけの大きさに影響しなかった

 3,500ppmや4,500ppmという比較的高いCO₂濃度でも、収穫されたしいたけの量や大きさに明らかな異常は確認されませんでした。

 これは、施設内のCO₂濃度だけを見ると意外な結果かもしれません。

 ただし、しいたけは自然界でも木材内部のような、外気よりCO₂濃度が高く、酸素濃度が低い環境で生育しています。

 このことが、今回の試験で施設内のCO₂濃度を高くしても、収穫量に明確な差が現れなかった理由の一つではないかと考察されています。

なぜ4,500ppmでも影響がなかったのか?

 研究では、菌床を入れたポリエチレン製の栽培袋に取り付けられた呼吸フィルターによるガス交換が限られているため、菌床袋の内部ではCO₂濃度が5%(50,000ppm)以上になるとされています。

 これに対して、施設内のCO₂濃度を3,000ppmから4,500ppmへ上げても、その差は1,500ppmです。

 菌床袋内部の50,000ppm以上というCO₂濃度と比較すると、施設内で生じる数千ppm程度の変化は、菌床内部の環境に比べれば相対的に小さいものです。

 研究では、このことが4,500ppmという施設内CO₂濃度でも収穫量に影響しなかった理由の一つではないかと考察しています。

しいたけ栽培ではCO₂を下げるために換気が必要?

 CO₂濃度が上昇すると、換気によって施設内のCO₂を外へ排出することができます。

 しかし、換気にはCO₂を下げること以外の影響もあります。

CO₂濃度を下げるには換気が必要

 施設内のCO₂濃度が上昇した場合、外気を取り入れて換気することでCO₂濃度を下げることができます。

 そのため、CO₂濃度を管理するうえで換気は重要な手段です。

 ただし、CO₂濃度だけを見て換気量を決めると、別の問題が生じる可能性があります。

換気しすぎると冷暖房の負担が増える

 夏場に冷房している施設で換気を行えば、冷やした空気を外へ排出し、暑い外気を取り込むことになります。

 冬場なら逆に、暖めた空気を外へ排出して、冷たい外気を取り込むことになります。

 つまり、CO₂濃度を低く保つために換気を増やすほど、冷房や暖房によって調整した空気を外へ逃がす量も増えることになります。

 今回の研究結果は、培養工程において、CO₂濃度を必要以上に低く維持するための換気を見直す材料の一つになります。

CO₂濃度と温度を合わせて管理する

 重要なのは、CO₂濃度だけを単独で管理することではありません。

 しいたけの生育に影響しない範囲で、温度、CO₂濃度、換気、冷暖房をバランスよく考えることが重要です。

 特に外気温が高い夏場や低い冬場では、CO₂濃度を下げるための換気が、そのまま空調負荷の増加につながります。

 そのため、CO₂濃度を測定しながら、必要以上の換気を行わないという考え方もできます。

しいたけの培養温度とCO₂濃度をどう管理する?

 今回の研究結果を実際の栽培管理に当てはめる場合、次のように考えることができます。

温度は22~24℃を基本に考える

 今回の研究では、20~24℃で収穫量に大きな差はありませんでしたが、20℃では袋内発生が見られた一方、26℃以上では収穫量が大きく低下しました。

 そのため、研究結果からは、22~24℃を基本的な温度帯として考えることができます。

 また、培養の前半と後半で温度を変えることで、菌糸の伸長と菌床の仕上がりを両立できる可能性も示されています。

CO₂は3,000ppm以下にすることだけを目的にしない

 今回の研究では、1,700~4,500ppmの範囲で収穫量に有意差が認められませんでした。

 そのため、培養工程では、「3,000ppmを超えたら必ず換気する」というように、CO₂濃度だけで機械的に判断する必要があるのかを見直す余地があります。

 ただし、4,500ppmが最適値という意味ではありません。

夏場はCO₂と冷房負荷のバランスを考える

 夏場は外気温が高いため、換気量を増やすほど冷房負荷が大きくなります。

 CO₂濃度を測定しながら、しいたけの生育に影響しない範囲で換気量を調整できれば、冷房した空気を必要以上に外へ逃がすことを抑えられる可能性があります。

冬場はCO₂と暖房負荷のバランスを考える

 冬場も考え方は同じです。

 換気を増やせばCO₂濃度は下げられますが、暖房した空気も外へ排出されます。

 そのため、冬場もCO₂濃度だけを見るのではなく、温度を維持するために必要なエネルギーとのバランスを考えることが重要になります。

この研究結果をそのまま栽培に使ってよい?

 ここまでの結果は、実際の栽培環境を考えるうえで参考になります。

 一方で、研究結果をそのまま「すべてのしいたけ栽培に当てはまる基準」と考えるのは適切ではありません。

4,500ppmを超えても問題ないとは言えない

 今回の研究で比較されたCO₂濃度は、1,700~4,500ppmです。

 そのため、4,500ppmを超える濃度でも収穫量に影響がないとは、この研究から判断できません。

 また、4,500ppmより高くすれば収穫量が増えるという結果も示されていません。

 したがって、今回の結果は、

「4,500ppmまでなら最適」ではなく、「今回の試験条件では1,700~4,500ppmの範囲で収穫量に差がなかった」

と理解するのが適切です。

培養工程と発生工程ではCO₂管理が異なる

 今回紹介した研究は、菌床の培養工程を対象としたものです。

 しいたけが実際に発生している段階では、CO₂濃度が高くなることで、しいたけの形態などに影響することが先行研究で報告されています。

 そのため、今回の研究結果をそのまま発生工程に当てはめることはできません。

 「培養中のCO₂管理」と「発生中のCO₂管理」は分けて考える必要があります。

菌株や菌床条件によって結果が変わる可能性がある

 今回の試験は、特定の菌株、菌床組成、温度、CO₂濃度、培養期間などの条件で行われたものです。

 菌株や菌床の組成、含水率、培養方法などが変われば、適した環境条件も変わる可能性があります。

 そのため、研究結果を栽培管理の参考にしながら、実際の施設で温度、CO₂濃度、発生状況、収穫量などを確認していくことも重要です。

まとめ|しいたけの培養では温度とCO₂をバランスよく管理する

 今回紹介した研究から見えてくるのは、しいたけの培養環境では、「温度もCO₂も低くすれば低くするほど良い」という単純な関係ではないということです。

 温度については、菌糸の伸長だけを見ると26℃付近が速かったものの、その後の褐変化や発生まで考えると、22~24℃が安定して収穫量を確保しやすい温度でした。

 一方、CO₂濃度については、1,700~4,500ppmの範囲では、収穫量に明確な差が認められませんでした。

 ただし、これは4,500ppmが最適値という意味ではなく、4,500ppmを超えても問題がないという意味でもありません。

 また、今回の研究は培養工程を対象としたものであり、発生工程のCO₂管理にそのまま当てはめることはできません。

 この結果は、しいたけ栽培における環境管理を、「できるだけ低く、できるだけ多く換気する」という考え方から、しいたけが必要とする環境を見極め、必要以上の換気や空調を行わないという考え方へ変えていくための一つの材料になります。

 特に夏場の冷房負荷が大きい施設では、CO₂濃度を測定しながら換気量を調整することで、冷房した空気を必要以上に外へ排出することを抑えられる可能性があります。

 しいたけの培養では、温度・CO₂・湿度をそれぞれ単独で管理するのではなく、「しいたけが生育できる環境」と「その環境を維持するためのエネルギー」の両方を考えて管理することが重要なのかもしれません。

参照文献
シイタケ菌床栽培における培養環境の温度とCO2濃度が 収穫量へ与える影響

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しいたけの乾燥方法|保存性を高めるための水分管理と乾燥の考え方

 生しいたけを乾燥させると、含まれている水分が大きく減り、保存しやすくなります。一方で、乾燥によって香りやうま味、食感も変化するため、単に「温度を上げて水分を飛ばせばよい」というものではありません。

 では、しいたけを乾燥させると、実際にはどれくらい水分が減るのでしょうか。また、乾燥機では何℃で何時間乾燥させればよいのでしょうか。

 ここでは、しいたけの乾燥について、水分が減る仕組みから乾燥機の使い方、仕上がりの確認方法まで、乾燥を効率よく進めるための基本的な考え方を紹介します。

しいたけを乾燥させると保存性が高まるのはなぜ?

乾燥すると、しいたけの水分はどれくらい減る?

 生しいたけの大きな特徴のひとつが、多くの水分を含んでいることです。

 これを乾燥させると、水分が大きく失われ、重量も大幅に減少します。

 乾しいたけの仕上がり重量は、生しいたけのおおよそ10分の1になることがあります。

 たとえば、生しいたけ20kgを乾燥させて2kgになったとすると、減った重量は18kgです。これは水分だけで考えれば、およそ18Lに相当します。

 つまり、20kgのしいたけを乾燥させるということは、乾燥機の中から18Lもの水分を外へ出す作業とも考えられます。

 この「大量の水分をどうやって乾燥機の外へ出すか」が、しいたけを効率よく乾燥させるうえで重要になります。

水分を減らすと微生物が増えにくくなる

 食品が傷みやすい大きな理由のひとつが、水分です。

 しいたけを乾燥させて水分を減らすと、カビや細菌などの微生物が活動しにくい状態になります。そのため、生しいたけに比べて保存性を高めることができます。

 ただし、乾燥させれば絶対に傷まなくなるわけではありません。

 乾燥後に湿気を吸って水分が増えると、保存性が低下したり、品質が変化したりする可能性があります。

 そのため、しいたけの乾燥では「十分に乾かすこと」だけでなく、乾燥後に湿気を吸わせないことも重要です。

乾燥後も湿気を吸わせないことが重要

 乾燥したしいたけは、周囲の湿度が高いと少しずつ水分を吸収します。

 せっかく乾燥させても、保管中に湿気を吸ってしまえば、乾燥によって得られた保存性が損なわれてしまいます。

 そのため、乾燥後はできるだけ湿気の入りにくい容器や袋に入れ、乾燥状態を維持することが大切です。

 乾燥は「水分を減らして終わり」ではなく、「減らした水分を戻さない」ことまで含めて考える必要があります。

しいたけの乾燥は「温度を上げればよい」わけではない

乾燥初期はしいたけから大量の水分が出る

 乾燥を始めたばかりのしいたけには、まだ大量の水分が残っています。

 ここで温度を上げると、しいたけから水分が蒸発し、乾燥機の中の空気に水蒸気が増えていきます。

 しかし、蒸発した水分を含んだ湿った空気が庫内に残ったままだと、その後の水分が蒸発しにくくなります。

 つまり、温度を上げるだけでは、乾燥が効率よく進むとは限りません。

湿った空気が庫内に残ると乾燥しにくくなる

 乾燥では、しいたけから水分を取り出して終わりではありません。

 蒸発した水分を含む空気を乾燥機の外へ出し、新しい空気を取り込むことで、さらにしいたけから水分を蒸発させることができます。

 反対に、湿った空気を庫内で循環させ続けると、空気が水分を受け取る余地が小さくなり、乾燥が進みにくくなります。

 そのため、乾燥初期には「しいたけを温めること」だけでなく、「湿った空気を外へ出すこと」が重要になります。

乾燥初期は「温度」より「排気」が重要

 乾燥初期のしいたけは水分が多いため、まずは蒸発した水分を乾燥機の外へ効率よく排出することが重要です。

 言い換えると、

水分が多いときは「水分を外へ出す」ことを優先し、水分が減ってきたら「熱を利用して乾燥を進める」

という考え方です。

 乾燥機の温度設定だけを見るのではなく、温度、排気、空気の流れを合わせて考える必要があります。

しいたけを効率よく乾燥させるには?

乾燥初期は湿った空気を外へ出す

 乾燥初期は、しいたけから大量の水分が蒸発します。

 そのため、乾燥機の中に湿った空気をため込まず、外へ排出することが重要です。

 湿った空気を排出し、新しい空気を取り込むことで、しいたけからさらに水分を蒸発させやすくなります。

 この段階では、「できるだけ高温にする」ことよりも、蒸発した水分を庫外へ逃がせる状態をつくることが乾燥を進めるポイントになります。

水分が減ったら温度を上げて乾燥を進める

 しいたけの水分が減ってくると、乾燥初期ほど大量の水分が出なくなります。

 この段階では、温度を利用して残った水分をさらに減らしていくことが重要になります。

 つまり、乾燥工程全体を同じ条件で考えるのではなく、

 乾燥初期:湿った空気を外へ出す
 乾燥が進んだ後:熱を利用して水分をさらに減らす

 というように、水分量の変化に合わせて考えることができます。

しいたけの量や厚さで乾燥時間は変わる

 しいたけの乾燥時間は、温度だけで決まるものではありません。

 乾燥させるしいたけの量や大きさ、厚さ、並べ方、乾燥機の構造などによって、乾燥の進み方は変わります。

 特に、厚みのあるしいたけでは、表面が乾いていても内部には水分が残っていることがあります。

 そのため、「○℃で○時間乾燥させれば完成」という条件を、すべてのしいたけにそのまま当てはめることはできません。

「何℃で何時間」だけでは乾燥を管理できない

 しいたけの乾燥では、温度と時間は重要な条件ですが、それだけで乾燥状態を判断するのは難しいものです。

 同じ温度、同じ時間で乾燥させても、しいたけの状態や投入量などによって仕上がりが変わることがあります。

 そのため、乾燥条件を決めるときは、

  • 乾燥機内の温度
  • 排気や換気の状態
  • しいたけから出る水分量
  • しいたけの大きさや厚さ
  • 乾燥後の硬さや割れ方

 などを合わせて確認することが大切です。

 乾燥機の設定値だけではなく、実際のしいたけがどのような状態になっているかを見ることが、乾燥を安定させるポイントになります。

乾燥しいたけの仕上がりを確認する方法

見た目だけでは乾燥状態を判断しにくい

 しいたけの乾燥が進むと、表面は硬くなり、見た目にも乾燥した状態になります。

 しかし、外側が乾いていても、内部に水分が残っていることがあります。

 特に、厚みのあるしいたけでは、表面だけを見て「十分に乾燥した」と判断するのは難しくなります。

 そのため、仕上がりを確認するときは、見た目だけでなく実際に割って内部の状態を見ることも重要です。

しいたけを割って内部の乾燥状態を確認する

 乾燥状態を確認する方法のひとつが、しいたけを割って内部を見ることです。

 外側と内部で硬さや水分の残り方に違いがないかを確認します。

 特に厚みのあるしいたけは、外側だけが乾いていて内部に水分が残っていないかを確認することが重要です。

硬さや割れ方から乾燥状態を判断する

 乾燥が進むにつれて、しいたけは柔らかい状態から硬い状態へ変化していきます。

 さらに乾燥が進むと、手で割ったときの感覚や割れ方も変わってきます。

 そのため、乾燥状態を確認するときには、

  • 持ったときの硬さ
  • 曲げたときの感覚
  • 手で割ったときの割れ方
  • 割った断面の状態

 などを確認することができます。

 乾燥状態を一定にするには、こうした感覚を自分の乾燥条件と結びつけて記録しておくことも役立ちます。

 ※しいたけの乾燥状態を「手で割った感覚」から判断する具体的な方法については、別のJournalで詳しく紹介します。

「干ししいたけ」と「乾ししいたけ」は何が違う?

「干ししいたけ」と「乾ししいたけ」の意味

 「干ししいたけ」と「乾ししいたけ」は、どちらも乾燥させたしいたけを表す言葉として使われています。

 「干す」は、日光や風などに当てて水分を抜くイメージが強く、「乾かす」は水分を取り除いて乾燥させるという意味合いがあります。

 実際の商品名などでは、「干ししいたけ」「乾しいたけ」など、複数の表記が使われています。

「乾ししいたけ」は乾燥機による乾燥にも使われる

 「乾ししいたけ」という表記は、乾燥機を使って乾燥させたしいたけにも使用されています。

 ただし、「干し」と「乾し」の違いだけで、乾燥方法を厳密に区別できるわけではありません。

 どちらも乾燥させたしいたけを表す言葉として使われています。

Mush takeでは「乾ししいたけ」と表記

 Mush takeでは、乾燥機を使用してしいたけを乾燥させていることから、「乾ししいたけ」という表記を使用しています。

 「干す」「乾かす」という言葉にはそれぞれのイメージがありますが、ここでは乾燥機を使って、しいたけの水分をしっかり取り除くという意味で「乾ししいたけ」としています。

まとめ|しいたけの乾燥は水分を「取り除く」ことが重要

 しいたけの乾燥は、単に温度を上げて水分を飛ばすだけの作業ではありません。

 乾燥によってしいたけの水分を大きく減らすことで、微生物が活動しにくくなり、保存性を高めることができます。

 一方で、乾燥初期には大量の水分が蒸発するため、その水分を含んだ湿った空気を乾燥機の外へ出すことが重要になります。

 そして水分が減ってきたら、熱を利用して残った水分をさらに減らしていきます。

 しいたけの乾燥では、

「何℃で何時間」だけを見るのではなく、今どれくらい水分が残っていて、その水分をどう外へ出すかを考えること。

 これが、乾燥を効率よく進め、安定した仕上がりにつなげるための基本的な考え方です。

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菌床しいたけの休養中に散水は必要?散水回数と発生量の関係を研究から解説

 菌床しいたけは、1回目の発生(芽が出ること)・収穫が終わった後に「休養」させ、再び浸水して次の発生を促すというサイクルを数回繰り返すことができます。

 ところが、栽培方法について調べてみると、休養中の管理について詳しく説明した情報は意外に多くありません。「1~2週間程度休養させる」「休養中に時々散水する」といった説明は見かけますが、どの程度の散水が、その後の発生にどのような影響を与えるのかは分かりにくいところがあります。

 そこで今回は、休養中の散水と休養期間について調べた研究論文を見つけたので、その内容を紹介します。

論文で行われた試験

 今回参考にしたのは、有馬忍氏による「除袋後および休養中の水分管理条件が菌床シイタケの発生に及ぼす影響」です。

 この研究では、クヌギチップを使用した菌床と森XR-1号を用い、除袋後の水洗処理、休養期間中の散水回数、休養期間の長さが、その後のしいたけの発生にどのような影響を与えるかを調べています。

 発生室は12~22℃の変温管理とされ、1回目の発生後には、次の発生を促すために菌床を6時間浸水しています。休養期間中の散水は、棚に固定したスプレーノズルから水道水を噴霧する方法で行われました。

 つまり、この研究は単純に「水をかければしいたけが増えるか」を調べたものではありません。

 休養中に菌床の水分状態をどのように管理すると、次の発生を安定させられるのか

という視点から行われた試験です。

休養中の散水について

 特に興味深いのが、1回目の発生が終わってから次の浸水までの4週間について、散水回数を変えた試験です。

 散水条件は、

  • 無散水
  • 週1回
  • 週3回
  • 週5回

の4条件。

 散水は1回につき2時間行われました。

 その結果、2回目の発生個数と発生量は、散水回数が増えるほど多くなる傾向が見られました。

 無散水では2回目の発生量が72.2gだったのに対し、週1回では175.4g、週3回では202.4g、週5回では238.4gとなっています。

 つまり、休養中に散水を行うことは、次の発生を確保するうえで一定の効果があると考えられます。

「散水するほど良い」わけではない

 ここで注意したいのが、散水回数を増やせば増やすほど良いわけではないという点です。

 週3回と週5回を比較すると、2回目の発生個数や発生量は週5回のほうが多くなりました。

 一方で、LM規格(L+M)の個数には大きな差がありませんでした。研究では、散水によって増えたのは主にS規格以下の小型のしいたけであり、過剰な散水はしいたけ1個あたりの大きさに悪影響を及ぼす可能性があると考察されています。

 これは非常に重要なポイントです。

 「発生個数を増やす」ことと「商品になる大きさのしいたけを増やす」ことは、必ずしも同じではありません。

 散水量を増やすことで発生数だけを増やしても、小型のしいたけが増えれば、収穫・選別の手間に対してメリットが小さくなる可能性があります。

週3回が一つの目安

 この試験では、1回2時間の散水を週3回行うことで、LM規格の個数を大きく落とすことなく、十分な発生量が得られました。

 研究では、休養中の散水条件として「1回2時間、週3回」が一つの効率的な条件として示されています。

 ただし、これはあくまで今回の試験条件における結果です。

 菌床の種類、菌株、培地の含水率、発生室の温度・湿度、風量、散水方法などが変われば、必要な水分管理も変わると考えられます。

 したがって、

「週3回・2時間が、すべての菌床しいたけ栽培における絶対的な正解」

と考えるのではなく、休養中の水分管理を考える際の一つの参考値として見るのが適切です。

休養期間は長ければ良いか?

 もう一つ興味深いのが、休養期間そのものについての試験です。

 1回目の収穫が終わってから次の浸水までを、

  • 3日
  • 10日
  • 17日
  • 24日

と変えて、その後の発生を比較しています。

 10日区では2回目の発生が多い傾向が見られましたが、統計的に有意な差は認められませんでした。

 また、3回目以降についても、3日区と24日区の間で発生量などに有意な差は認められませんでした。

 この結果から、この試験条件では、休養期間を長くしたことによって、その後の発生量が明確に増えるとはいえないことが分かります。

休養期間を管理する必要がある

 では、休養期間は短くても長くても構わないのでしょうか。

 そう単純ではありません。

 研究では、休養期間が長くなると、その間にしいたけが発生することが確認されています。また、発生室の構造や温度制御方法は生産現場によって大きく異なるため、それぞれの現場に合わせて浸水や散水のタイミングを計画する必要があるとしています。

 つまり休養とは、単純に「○日間何もしない期間」ではありません。

 次の発生に向けて菌床の状態を整えながら、次の浸水・発生のタイミングを調整する期間

と考えたほうが分かりやすいでしょう。

 休養期間を長くしすぎれば、その間に自然に芽が動き始める可能性があります。逆に、短すぎれば、栽培施設の条件によっては計画した発生サイクルと合わなくなることも考えられます。

除袋後の「水洗い」と「散水」は別に考える

 この研究では、休養中の散水とは別に、除袋直後の菌床を水洗いしながら手やブラシで擦る処理についても調べています。

 その結果、菌床表面を水洗いしながら手やブラシで擦る処理では、その後の発生量が減少する傾向が見られました。

 90日培養の菌床では、手で擦る処理によって1~3回目の発生量が対照区より約30%減少しました。また、111日培養の菌床ではブラシで擦る処理によって同様に約30%減少しました。

 一方、除袋後の菌床に10秒間散水するだけの処理では、しいたけの発生への影響は小さいとされています。

 ここは「除袋後は散水してはいけない」という意味ではありません。

 重要なのは、

水をかけることと、菌床表面を強く擦ることは別の操作である

ということです。

 菌床表面を洗いながら手やブラシで擦ることによって、発生に必要な菌床表面の状態まで変化させてしまう可能性があります。

休養中の水分管理で考えたいこと

 今回の研究から見えてくるのは、休養中の水分管理では「乾かさないこと」だけを考えればよいわけではないということです。

 散水をしなければ2回目の発生量が少なくなりました。

 一方で、散水回数を増やしすぎると小型のしいたけが増え、LM規格の個数を増やす効果は限定的でした。

 つまり、

少なすぎても、多すぎても良くない。

 次の発生に必要な水分を確保しながら、どの程度の大きさのしいたけを、どのタイミングで発生させるのかを考える必要があります。

 休養中の散水は「水を与えてしいたけを育てる」というより、次の発生に向けて菌床の水分状態を維持・調整する管理と考えると理解しやすいでしょう。

まとめ

 今回紹介した研究では、1回目の発生後の休養期間中に散水を行うことで、次の発生個数・発生量が増加しました。

 特に、1回2時間の散水を週3回行った条件では、LM規格の個数を大きく落とさず、十分な発生量が得られました。一方、週5回まで散水回数を増やすと発生個数・発生量は増えましたが、その増加は主にS規格以下の小型のしいたけによるものでした。

 また、休養期間を3日、10日、17日、24日と変えても、その後の発生量に明確な差は確認されませんでした。ただし、休養期間が長くなるとその間にしいたけが発生することがあり、施設の温度・湿度条件なども生産現場によって異なるため、休養期間は一律の日数で決めるのではなく、計画的に管理する必要があります。

 そして、除袋後の菌床については、10秒程度の散水そのものの影響は小さい一方、水洗いしながら手やブラシで菌床表面を擦る処理は、その後の発生量を減少させる可能性があることにも注意が必要です。

 この研究を参考にすると、休養中の水分管理は、

「できるだけ水を与える」のではなく、「次の発生に必要な水分を保ちながら、発生量としいたけの大きさのバランスを取る」

ことが重要だと考えられます。

 ただし、今回の研究は特定の菌株・菌床・温度条件で行われたものです。そのため、実際の栽培ではこの数値をそのまま当てはめるのではなく、自分の菌床での発生状況を記録しながら、散水回数や休養期間を調整していくことが重要でしょう。

参照文献
除袋後および休養中の水分管理条件が菌床シイタケの発生に及ぼす影響

 この論文では、休養中の散水だけでなく、除袋後の水洗・擦り処理、休養期間、発生量・発生個数・LM規格の変化まで比較されています。特に「散水量を増やせば収量も単純に増えるわけではない」という点が、実際の栽培管理を考えるうえで興味深い研究です。

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しいたけの鮮度を保つには?温度・包装・予冷で考える鮮度保持

 しいたけは収穫した後も呼吸を続けています。時間が経つにつれて水分や栄養分が失われ、鮮度は少しずつ低下していきます。

 では、しいたけの鮮度を保つには、何に気を付ければよいのでしょうか。

 生産者が収穫後に行う温度管理や包装、予冷だけでなく、購入したしいたけを家庭で保存するときも、温度・水分・包装・保存期間が重要になります。

 この記事では、しいたけの鮮度が低下する仕組みから、温度や包装によって鮮度を保つ方法、収穫後の予冷について解説します。さらに、しいたけを購入した後、家庭でできる鮮度保持のポイントについても紹介します。

 しいたけをできるだけおいしい状態で食べるために、鮮度を守るための「温度・包装・時間」という3つの視点から考えてみます。

しいたけの鮮度はなぜ低下する?

収穫後もしいたけは呼吸を続ける

 しいたけは収穫された後も、すぐに活動を止めるわけではありません。

 収穫後も呼吸を続けており、周囲の酸素を取り込み、二酸化炭素を放出しています。その過程では、しいたけ自身が蓄えている栄養分が消費されます。

 つまり、収穫後もしいたけの中では変化が続いているということです。

 この変化をできるだけゆっくりにすることが、鮮度を長く保つための基本になります。

呼吸によって栄養分が消費される

 呼吸によってしいたけが蓄えている成分が消費されると、収穫直後の状態から少しずつ変化していきます。

 また、呼吸では熱も発生します。

 収穫後のしいたけを大量に集めたり、温度の高い環境に置いたりすると、この呼吸による変化が進みやすくなります。

 そのため、収穫後のしいたけは、できるだけ呼吸が活発にならない環境に置くことが重要です。

温度が高いほど呼吸が活発になる

 しいたけの呼吸は、温度によって変化します。

 一般的に温度が高くなるほど呼吸が活発になり、収穫後の品質変化も進みやすくなります。

 さらに、呼吸によって熱が発生するため、しいたけ自身の温度が上がり、それによってさらに呼吸が進むということも考えられます。

 そのため、収穫後にしいたけの品温をできるだけ上げないことが、鮮度保持の重要なポイントになります。

水分の蒸散によってしいたけがしおれる

 鮮度低下に関係するのは、呼吸だけではありません。

 しいたけは水分を多く含んでいるため、収穫後も水分が少しずつ外へ失われていきます。これを「蒸散」といいます。

 水分が減ると、しいたけは徐々にしおれ、張りや食感が失われていきます。また、重量も減少します。

 つまり、しいたけの鮮度低下には、

呼吸による成分の消費
水分の蒸散によるしおれ

の両方が関係しています。

 これらの変化を抑えるために、まず重要になるのが温度管理です。

しいたけの鮮度を保つには「低温」が重要

しいたけを低温にすると呼吸を抑えられる

 しいたけの鮮度を保つには、収穫後の品温をできるだけ早く下げ、低温を維持することが重要です。

 低温にすることで、しいたけの呼吸が穏やかになり、呼吸による成分の消費を抑えやすくなります。

 また、呼吸に伴って発生する熱も抑えられるため、収穫後の品質変化を遅らせることにつながります。

 農林水産省の「生鮮きのこ輸出実行プラン」でも、低温管理によって呼吸熱の上昇を抑え、きのこからの水分蒸散を少なくすることが鮮度保持に重要であるとされています。

低温にすると水分の蒸散も抑えられる

 低温管理のもう一つのメリットが、水分の損失を抑えやすくなることです。

 しいたけは温度が高いほど水分を失いやすくなるため、収穫後に温度が上がると、しおれや重量減少も進みやすくなります。

 低温を保つことで水分の蒸散を抑え、しいたけの張りやみずみずしさを維持しやすくなります。

 このように低温管理は、

呼吸を抑える
呼吸熱の発生を抑える
水分の蒸散を抑える

という複数の面から鮮度保持に役立ちます。

冷蔵しても微生物が死滅するわけではない

 低温保存には、もう一つの効果があります。

 温度を下げることで、しいたけに害を及ぼす微生物などの増殖や活動を抑えることが期待できます。

 ただし、冷蔵したからといって微生物が必ず死滅するわけではありません。

 低温保存の主な役割は、微生物の増殖や活動を抑え、品質の低下を遅らせることです。

 そのため、低温にしておけば長期間品質が変わらないということではなく、適切な温度管理とともに、衛生管理や包装、流通時間なども重要になります。

収穫後はできるだけ早く冷やす

 収穫したしいたけは、収穫した時点から温度の影響を受けます。

 そのため、収穫後に常温で長時間置いてから冷やすよりも、できるだけ早く品温を下げることが鮮度保持につながります。

 ここで重要になるのが「予冷」です。

 予冷とは、出荷や本格的な冷蔵保存の前に、収穫した農産物の品温をできるだけ早く下げることです。

 しいたけの場合も、収穫後の初期段階でしっかり冷却することが、その後の鮮度を保つための重要な工程になります。

しいたけの包装は鮮度保持にどう役立つ?

包装すると水分の損失を抑えられる

 しいたけをそのまま置いておくと、水分が外へ逃げやすくなります。

 そこで包装することで、しいたけからの水分の蒸散を抑え、しおれや重量減少を防ぎやすくなります。

 ただし、包装すればするほど良いわけではありません。

 しいたけは包装した後も呼吸を続けるため、包装内部には二酸化炭素が増え、酸素が減っていきます。

 そのため、鮮度保持を目的とした包装では、水分を逃がさないことと、呼吸に必要なガス交換を適切に保つことの両方を考える必要があります。

しいたけは包装後も呼吸を続ける

 包装すると、しいたけの呼吸が止まるわけではありません。

 しいたけは包装内部でも酸素を取り込み、二酸化炭素を放出し続けます。

 そのため、包装した状態では、包装内部の酸素濃度が徐々に低下し、二酸化炭素濃度が上昇します。

 この性質を利用して、しいたけの呼吸を穏やかにする考え方があります。

MA包装で呼吸を穏やかにする

 青果物の鮮度保持では、包装内部のガス環境を調整する「MA(Modified Atmosphere:ガス環境調整)」という考え方があります。

 包装内部の酸素を外気より少し低くし、二酸化炭素を少し高くすることで、しいたけの呼吸を穏やかにする方法です。

 ただし、これは単純に袋を密閉すればよいというものではありません。

 しいたけの呼吸量と包装材のガス透過性のバランスによって、包装内部の環境は変化します。

 そのため、鮮度保持を目的とした包装では、しいたけの呼吸量に合わせたガス透過性を持つ包装材を選ぶことが重要になります。

酸素は少なければ少ないほど良いわけではない

 MA包装について注意したいのが、酸素は少なければ少ないほど良いわけではないということです。

 酸素が極端に少なくなると、しいたけが通常とは異なる呼吸状態になり、異臭などの品質低下につながる場合があります。

 そのため、しいたけの呼吸を抑えながらも、正常な状態を維持できる範囲にガス環境を保つ必要があります。

 つまり、鮮度保持包装では「できるだけ酸素を減らす」のではなく、しいたけに合ったガス環境をつくることが重要です。

結露を防ぐことも重要

 包装では、水分を逃がさないことだけでなく、結露にも注意が必要です。

 しいたけは水分を多く含んでいるため、温度差などによって包装内部に水滴が発生することがあります。

 水滴が包装内部に多くたまると、見た目が悪くなるだけでなく、品質保持の面でも好ましくありません。

 そのため、鮮度保持では、

乾燥させすぎない
水滴を発生させすぎない
呼吸を抑えすぎない

という複数の条件をバランスよく整える必要があります。

しいたけの予冷とは?なぜ収穫後に冷やすのか

予冷とは収穫後に品温を下げること

 予冷とは、収穫した農産物を、流通や保存に適した温度まであらかじめ冷却することです。

 しいたけの場合は、収穫直後の品温をできるだけ早く下げることで、その後の呼吸や水分の損失を抑え、鮮度を保持しやすくします。

 農林水産省の資料では、きのこの予冷方法として、冷蔵庫による冷却のほか、強制通風予冷、差圧予冷、真空予冷などが紹介されています。

予冷によって鮮度低下を遅らせる

 収穫直後のしいたけをそのまま高い温度に置いておくと、呼吸や水分の蒸散が進みやすくなります。

 そこで、できるだけ早い段階で品温を下げます。

 低温にすることで、その後の呼吸や水分の蒸散を抑え、鮮度の低下を遅らせることができます。

 農林水産省の資料では、しいたけの鮮度保持において品温を3℃程度まで下げることが重要なポイントとして示されています。

しいたけの予冷にはどんな方法がある?

 予冷にはいくつかの方法があります。

 冷蔵庫の中で冷却する方法のほか、冷たい空気をしいたけに通して冷却する強制通風予冷、差圧予冷、真空予冷などがあります。

 それぞれ冷却の速さや設備の特徴が異なるため、取り扱う量や設備、出荷方法などに合わせて選ぶ必要があります。

 重要なのは、単に「冷蔵庫に入れる」ことではなく、収穫後のしいたけの品温をできるだけ早く、適切な温度まで下げることです。

予冷は「早く冷やせばよい」だけではない

 予冷では、冷却速度だけを考えればよいわけではありません。

 しいたけを冷却する過程でも、水分が失われることがあります。

 そのため、できるだけ早く冷やしながらも、必要以上に水分を失わせないことが重要です。

 つまり、予冷では、

冷却速度
品温
水分損失

のバランスを考える必要があります。

冷却と水分損失のバランスも重要

 鮮度保持では、「早く冷やすこと」と「水分を守ること」を別々に考えるのではなく、両方を合わせて考える必要があります。

 しいたけの水分をできるだけ維持しながら品温を下げ、その後も低温を維持することで、収穫後の品質変化を抑えやすくなります。

 予冷は、単にしいたけを冷たくする工程ではなく、収穫後のしいたけを鮮度保持に適した状態へ早く移行させる工程と考えることができます。

しいたけは「冷やしてから包装」がいい?

温かいまま包装すると結露することがある

 収穫したしいたけを温かい状態のまま包装して、その後冷却すると、包装内部に結露が発生する場合があります。

 しいたけや包装内部の空気が冷やされることで、空気中の水分が水滴になるためです。

 包装内部に水滴が多く発生すると、見た目だけでなく品質保持の面でも好ましくありません。

 そのため、包装するタイミングを考えることも鮮度管理の一部になります。

冷却してから包装するメリット

 あらかじめしいたけの品温を下げてから包装すれば、包装後も低温状態から保存・流通を始めることができます。

 また、温かいしいたけを先に包装してから冷却する場合と比べ、冷却時の温度差による結露を抑えやすくなります。

 ただし、包装方法やフィルムの性質、冷却条件などによって結果は変わるため、「必ず冷却してから包装すれば結露しない」という意味ではありません。

 重要なのは、冷却と包装を別々の工程として考えるのではなく、両方を組み合わせて鮮度を管理することです。

Mush takeの生しいたけの出荷方法

 Mush takeでは、収穫後のしいたけを3℃で24時間予冷した後に包装し、出荷する方法を採用しています。

 基本的な流れは、

収穫

3℃で予冷

包装

出荷

です。

 先に十分に冷却してから包装することで、低温状態から包装・出荷をスタートできるようにしています。

 これは、収穫後のしいたけをできるだけ良い状態で次の工程へ移すための、Mush takeの鮮度管理の考え方です。

しいたけの鮮度保持で重要なのは「温度・包装・時間」

 しいたけの鮮度を保つために重要なのは、できるだけ呼吸や水分の損失を抑え、品質が低下する時間を短くすることです。

 そのためには、生産者だけでなく、購入後の家庭でも次のようなことを意識するとよいでしょう。

購入したら、できるだけ早く冷蔵する

 しいたけは温度が高いほど呼吸が活発になり、水分も失われやすくなります。

 購入後は常温のまま長時間置かず、できるだけ早く冷蔵庫へ入れることが鮮度保持につながります。

乾燥させすぎない

 しいたけは水分を失うと、傘や軸がしおれて食感が低下します。

 冷蔵庫の中は乾燥しやすいため、裸のまま長時間保存するよりも、適切な包装によって水分の損失を抑えることが大切です。

結露にも注意する

 一方で、袋の中に水滴がたまるほど湿度が高くなると、品質低下につながることがあります。

 「乾燥させない」ことだけを考えるのではなく、水滴がたまりすぎない状態を保つことも重要です。

できるだけ早く食べる

 冷蔵することで鮮度低下を遅らせることはできますが、収穫直後の状態に戻すことはできません。

 保存温度や包装を適切にしていても、時間とともに品質は変化します。購入後はできるだけ早く食べることが、もっとも確実な鮮度保持につながります。

 保存状態だけでなく、保存方法によって「どのくらい日持ちするか」も変わります。冷蔵・冷凍・半乾燥それぞれの保存期間の目安については、「しいたけの日持ち」で紹介しています。

まとめ|しいたけの鮮度を守るには?

 しいたけは収穫後も呼吸を続け、水分を失いながら少しずつ鮮度が低下していきます。

 そのため、生産者から消費者まで、鮮度を守るためには「温度・包装・時間」を意識することが重要です。

 家庭でしいたけを購入した後は、次の4点を意識するとよいでしょう。

  • 購入したら、できるだけ早く冷蔵する
  • 乾燥を防ぐため、適切に包装する
  • 袋の中に水滴がたまりすぎないようにする
  • 保存期間を長くしすぎず、できるだけ早く食べる

 「冷やせば大丈夫」ではなく、冷やす・乾燥させすぎない・結露させすぎない・早く食べるというバランスが大切です。

 しいたけの鮮度は、収穫した瞬間だけで決まるものではありません。収穫後の温度管理や包装、流通、そして購入後の保存まで、それぞれの段階で少しずつ鮮度を守ることが、おいしいしいたけを食べることにつながります。

参考文献

農林水産省「生鮮きのこ輸出実行プラン」(1)
農林水産省「生鮮きのこ輸出実行プラン」(2)
農林水産省「生鮮きのこ輸出実行プラン」(3)
キノコの鮮度保持に及ぼす短期低温処理の効果

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