しいたけパウダーは何と相性がいい?|うま味・風味・食材との組み合わせ

 しいたけパウダーは、肉や魚、野菜、味噌など、さまざまな食材や調味料と組み合わせて使うことができます。

 ただ、「何にでも合う」というだけではありません。

 しいたけパウダーに含まれるうま味成分や香りは、組み合わせる食品の水分や油分、もともと含まれているうま味成分などによって、料理へのなじみ方が変わります。

 ここでは、しいたけパウダーがどんなものと組み合わせやすいのか、そして一見相性がよくなさそうなものを使うときには、どんな工夫ができるのかを紹介します。

まず知っておきたい、うま味の組み合わせ

 しいたけのうま味を考えるうえで、代表的な成分がグアニル酸です。

 一方、昆布などに多く含まれるグルタミン酸や、肉や魚などに含まれるイノシン酸(IMP)も、料理のうま味をつくる重要な成分です。

 これらは単独で働くだけでなく、組み合わせることでうま味の感じ方が強くなることが知られています。

 例えば、しいたけ由来のグアニル酸と、肉や魚などに含まれるイノシン酸、野菜や味噌などに含まれるグルタミン酸が同じ料理の中に存在すると、それぞれのうま味成分が組み合わさることで、うま味をより感じやすくなることがあります。

 そのため、しいたけパウダーは「しいたけの味を足す」というだけでなく、料理にすでにあるうま味との組み合わせを考えて使うことができます。

肉や魚との組み合わせ

 肉や魚は、しいたけパウダーと組み合わせやすい食材のひとつです。

 肉や魚にはイノシン酸などのうま味成分が含まれているため、しいたけ由来のグアニル酸との組み合わせによるうま味の変化が期待できます。

 また、肉や魚にはもともと水分が含まれています。

 しいたけパウダーのうま味成分は水に溶けやすいため、パウダーを肉や魚に直接加えた場合でも、調理中に食材から出てくる水分や、加えた調味料などに触れることで、料理になじんでいきます。

 つまり、「粉を直接かける=うま味がそのまま残る」というわけではありません。

 調理中の水分を介して、しいたけのうま味が食材や料理全体に広がっていくこともあります。

 肉料理なら、下味として加える方法だけでなく、調理中や仕上げに加える方法もあります。

 どの段階で加えるかによって、料理の中での広がり方や、しいたけの風味の感じ方は変わります。

野菜との組み合わせ

 野菜とも相性よく使えます。

 野菜にはグルタミン酸などのうま味成分が含まれるものがあり、しいたけのグアニル酸との組み合わせによって、料理のうま味を補うことができます。

 特に、煮物やスープ、炒め物など、野菜から水分が出たり、だしや調味料を使ったりする料理では、パウダーをなじませやすくなります。

 また、しいたけの風味を強く出すことだけが目的ではありません。

 少量のしいたけパウダーを加えることで、野菜そのものの味わいを含め、料理全体のうま味のバランスが変わることがあります。

味噌や醤油などの調味料との組み合わせ

 味噌や醤油などの発酵調味料も、しいたけパウダーと組み合わせやすいものです。

 これらにはグルタミン酸などのうま味成分が含まれているため、しいたけのグアニル酸と組み合わせることで、うま味の重なりをつくることができます。

 また、味噌汁や煮物、たれなど、水分を含む料理に使えば、パウダーを全体になじませやすくなります。

 ただし、味噌や醤油そのものにしいたけパウダーを大量に加えればよいわけではありません。

 しいたけの風味が強くなりすぎると、もとの調味料や食材の風味とのバランスが変わるため、まずは少量から試すのがおすすめです。

水分のある料理とは相性がいい

 しいたけパウダーの使いやすさを考えるうえで、料理にどのくらい水分があるかは重要なポイントです。

 うま味成分は水に溶けやすいため、スープ、味噌汁、煮物、たれなど、水分を含む料理ではパウダーをなじませやすくなります。

 例えば、スープに加えれば、しいたけパウダーに含まれる成分がスープ全体に広がりやすくなります。

 肉や野菜に直接加える場合でも、食材から出る水分があれば、パウダーがなじむきっかけになります。

 このため、「水分がある料理」は、しいたけパウダーを料理全体に広げたいときに使いやすいと考えることができます。

油とは相性が悪い?

 では、油を使う料理はどうでしょうか。

 ここは少し注意が必要です。

 しいたけパウダーに含まれるうま味成分は水に溶けやすく、油には溶け込みにくい性質があります。そのため、油そのものにパウダーを混ぜても、うま味成分を油全体になじませることは難しいです。

 一方で、しいたけの香り成分には油に移りやすいものもあります。

 そのため、油を使った料理だからしいたけパウダーが使えない、ということではありません。

 例えば炒め物では、油だけの状態でパウダーをなじませようとするよりも、肉や野菜から出る水分や、加えた調味料などが加わった料理全体に混ぜることで、うま味成分をなじませやすくなります。

 つまり、油との相性を考えるときは、「油に溶かす」のではなく、料理の中にある水分を利用するという考え方がポイントになります。

 また、油を使うことで、しいたけの香りを料理に広げるという使い方も考えられます。

水分が少ない料理では工夫が必要

 水分の少ない料理では、しいたけパウダーが均一になじみにくいことがあります。

 例えば、乾いた状態の食材にパウダーだけを振りかけると、表面に粉が残ったり、一部分に偏ったりすることがあります。

 その場合は、少量の水や調味料と合わせてから加えたり、食材から水分が出るタイミングで加えたりすると、なじませやすくなります。

 また、ポテトサラダや卵料理のように、もともと水分や油分を含み、全体を混ぜ合わせる料理では、パウダーを混ぜ込むことで均一に広げやすくなります。

 このような料理では、「何と相性が悪いか」よりも、「どうすればなじませやすいか」を考える方が、使い方を広げやすくなります。

冷たい料理との組み合わせ

 冷たい料理にも、しいたけパウダーは使えます。

 加熱しなくても、パウダーに含まれるうま味成分を利用することはできます。

 ただし、冷たい料理では加熱による香りの変化が起こりにくいため、温かい料理とは違った風味の感じ方になることがあります。

 また、水分の少ない冷たい食品ではパウダーがなじみにくい場合もあります。

 そのため、ドレッシングやマヨネーズなどの調味料と混ぜたり、全体をよく混ぜ合わせたりすることで使いやすくなります。

「相性がいい」は、ひとつの意味ではない

 ここまで見てきたように、しいたけパウダーの「相性がいい」には、いくつかの意味があります。

 うま味成分の組み合わせがよいこと。

 料理になじませやすいこと。

 しいたけの風味と食材の風味が合うこと。

 この3つは、必ずしも同じではありません。

 例えば、うま味成分の組み合わせとしては相性がよくても、しいたけの香りが強く感じられることで、好みに合わないことがあります。

 反対に、うま味成分の組み合わせを意識しなくても、少量加えることで料理全体の風味がまとまり、おいしく感じることもあります。

 だからこそ、しいたけパウダーを使うときは、「何と合わせるか」だけでなく、料理の水分、油分、食材そのものの味や香りも含めて考えてみると、使い方の幅が広がります。

相性が悪いのではなく、工夫が必要な場合も

 しいたけパウダーは、特定の食品とは相性が悪くて使えない、というものではありません。

 ただし、油だけのものや水分の少ない食品など、うま味成分が料理になじみにくい条件はあります。

 そのような場合でも、少量の水分や調味料と合わせる、食材から出る水分を利用する、料理全体に混ぜ込むなど、使い方を少し変えることでなじませやすくできます。

 「合う・合わない」と決めてしまうより、しいたけパウダーの性質に合わせて使い方を変えることが大切です。

 どんな食材と組み合わせるかが決まったら、次に気になるのが「いつ加えるか」です。

 加熱する前、調理の途中、仕上げなど、加えるタイミングによる違いについては、「しいたけパウダーはいつ加える?」で紹介しています。

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しいたけの保存方法|冷凍・冷蔵・半乾燥の使い分け

買ってきた生しいたけが余ったとき、「冷蔵と冷凍、どちらがいい?」「どのくらい保存できる?」と迷うことはありませんか?

しいたけの保存方法は、いつ使うのか、どのような料理に使うのかによって選ぶのがおすすめです。

数日~1週間程度なら冷蔵、もう少し長く保存したいなら冷凍、風味の変化を楽しみながら水分を減らしたいなら半乾燥。それぞれ保存性や食感、風味に違いがあります。

保存方法によって、しいたけがどのくらい日持ちするのかも変わります。冷蔵・冷凍・半乾燥での保存期間の目安については、「しいたけの日持ち」で詳しく紹介しています。

また、保存するときは、基本的にしいたけを水洗いせず、そのまま保存するのがおすすめです。水分が付いた状態で保存すると、傷みやすくなったり、食感が悪くなったりする場合があります。汚れが気になる場合は、保存前ではなく、調理する直前に必要に応じて軽く洗うようにしましょう。

この記事では、冷凍・冷蔵・半乾燥それぞれの特徴や保存期間の目安、保存するときのポイントを紹介します。

「余ったしいたけをどう保存しよう?」と思ったときは、使う時期と料理に合わせて保存方法を選んでみてください。

冷凍する

・保存期間の目安:約1か月
・特徴:長く保存でき、調理にもそのまま使える

 生しいたけを比較的長く保存したいときに便利なのが冷凍です。

 しいたけを冷凍すると、細胞内の水分が凍ることで細胞の構造が変化し、成分が移動・反応しやすくなります。

そのため、冷凍による細胞構造の変化や、その後の加熱によって、生のしいたけとは異なるうま味を感じやすくなる場合があります。

ただし、冷凍すれば必ずうま味が増えるというわけではなく、しいたけの鮮度、冷凍条件、加熱方法などによっても変わります。

しいたけのうま味と加熱による変化については、「しいたけのうま味はなぜ加熱すると変わる?で詳しく紹介しています。

 ただし、冷凍すれば必ずうま味が増えるというわけではなく、しいたけの鮮度、冷凍条件、加熱方法などによっても変わります。

 保存するときは、石づきを取り、使いやすい大きさにしてから冷凍しておくと便利です。料理に使うときは、基本的に解凍せず、凍ったまま加熱するのがおすすめです。
 炒め物や煮物、汁物などにそのまま加えることができるため、解凍する手間もありません。

 「余ったしいたけを無駄なく使いたい」という場合には、家庭でも取り入れやすい保存方法です。

冷蔵する

・保存期間の目安:約1週間
・特徴:生しいたけらしい食感を残しやすい

 数日から1週間程度で使うのであれば、冷蔵保存が基本です。

 生しいたけは収穫後も呼吸を続けています。
 呼吸が活発になると、しいたけ自身が蓄えている成分や水分を消費し、鮮度の低下が早くなります。反対に、温度を下げて呼吸をゆるやかにすることで、鮮度の低下を遅らせることができます。そのため、冷蔵庫で保存することは、生しいたけの鮮度を保つうえで有効です。

 また、低温にすることで、しいたけに付着している微生物の増殖を抑えることも期待できます。ただし、冷蔵は微生物を完全に死滅させるものではありません。時間が経つほど鮮度は低下していくため、「冷蔵すれば長期間安全に保存できる」というものではありません。

 保存するときは、しいたけを洗わず、キッチンペーパーなどで包んでから保存袋などに入れ、冷蔵庫へ入れます。

 保存期間はあくまで目安で、購入時の鮮度や冷蔵庫内の温度・湿度によって変わります。傘や軸に変色、ぬめり、異臭などが見られる場合は、期間だけで判断せず、状態を確認してください。

 冷蔵保存は、生しいたけの食感や香りを活かしたい料理に向いている保存方法です。

半乾燥する

・保存期間の目安:条件によって異なる
・特徴:水分を減らして保存性を高め、風味も変化する

 もう少し長く保存したい、あるいは生しいたけとは少し違った風味を楽しみたい。

 そんなときは、しいたけの水分をある程度抜く半乾燥という方法があります。

 生しいたけは重量の約90%が水分とされるほど、水分を多く含んでいます。
 食品は一般的に、水分が多いほど微生物が利用できる水分も多くなり、傷みやすくなります。そのため、しいたけから水分を抜くことは、保存性を高めるための基本的なアプローチのひとつです。

 家庭で行う場合は、しいたけを洗わず、天日または風通しのよい日陰で1~2日程度を目安に干して、水分を減らしていきます。イメージとしては、洗濯物を干して水分を抜いていくのと同じです。

 ただし、半乾燥は「乾しいたけ」と同じ保存性になるわけではありません。
 乾しいたけのように十分に乾燥させて水分を大きく減らしたものと比べると、半乾燥しいたけにはまだ水分が多く残っています。そのため、半乾燥したからといって、常温で長期間保存できるとは考えない方がよいでしょう。

 家庭での半乾燥は、保存性を少し高めながら、しいたけの風味や食感を変化させる方法と考えると分かりやすいでしょう。

 また、しいたけは乾燥が進むことで、香りやうま味の感じ方も変化します。
 特に乾燥しいたけでは、乾燥・戻し・加熱という過程を経ることで、しいたけ特有の香りやうま味を強く感じられるようになります。

 しいたけの乾燥度合いによる風味の変化については、「しいたけの風味は乾燥度合いでどう変わる?」で詳しく紹介しています。

 半乾燥では完全な乾しいたけほどの変化にはなりませんが、生しいたけとは違った風味を楽しめるのも特徴です。

 なお、半乾燥後の保存期間は、乾燥の程度、保存温度、湿度、包装状態によって大きく変わります。
 そのため、「半乾燥なら約2週間」と一律に考えるより、十分に乾燥した乾しいたけとは違い、保存状態を確認しながら早めに使う保存方法と考えるのがおすすめです。

保存方法は「いつ使うか」で選ぶ

 しいたけの保存方法には、それぞれ向き・不向きがあります。

すぐに使うなら冷蔵。
生しいたけらしい食感や香りを残したいときに向いています。

少し先の料理に使うなら冷凍。
保存期間を延ばしながら、凍ったまま料理に使える手軽さがあります。

風味の変化を楽しみながら水分を減らしたいなら半乾燥。
ただし、半乾燥は乾しいたけほどの長期保存には向きません。

「余ったから、とりあえず冷蔵」だけではなく、「いつ使うのか」「どんな料理に使うのか」から保存方法を選ぶ。それだけでも、しいたけを最後までおいしく無駄なく楽しみやすくなります。

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しいたけのうま味はなぜ加熱すると変わる?|グアニル酸の不思議

しいたけのうま味は、加熱すれば必ず強くなるわけではありません。
乾燥・水戻し・加熱の条件によって、うま味成分であるグアニル酸の生成や分解が変わるため、加熱する温度や時間、加熱の仕方によってうま味の感じ方が変わります。

特に乾しいたけでは、乾燥によってしいたけの細胞が変化し、水戻しによって酵素が働き、さらに加熱することでグアニル酸の状態が変化します。低温でじっくり加熱するのか、沸騰するような高温で加熱するのか、どのくらいの時間加熱するのかによっても、グアニル酸の変化は異なります。

つまり、「乾燥したからうま味が増える」「加熱すればうま味が増える」と単純に考えることはできません。
大切なのは、どの温度で、どのくらい加熱するかという条件です。

では、グアニル酸はどのように生まれ、乾燥・水戻し・加熱によってどう変化するのでしょうか。

この記事では、しいたけのうま味が変化する仕組みを、グアニル酸を中心に解説します。さらに、加熱しない料理にしいたけパウダーを使った場合はどうなるのか、なぜしいたけを加えると他の食材の味わいまで変わって感じられるのかについても考えてみます。


グアニル酸とは?

グアニル酸は、5′-グアニル酸とも呼ばれる核酸系のうま味成分です。

うま味には、

  • 昆布などのグルタミン酸
  • かつお節などのイノシン酸
  • 乾ししいたけなどのグアニル酸

があります。

そして、これらは単独で使うだけでなく、組み合わせることでうま味が強く感じられることがあります。

特に、グルタミン酸と核酸系のうま味成分であるグアニル酸やイノシン酸には、うま味の相乗効果があります。農林水産省も、昆布のグルタミン酸と干ししいたけのグアニル酸などを組み合わせることで、うま味が増すことを紹介しています。

つまり、しいたけのうま味は、

「しいたけだけの味を強くする」

というより、

「他の食材が持っているうま味と組み合わさることで、全体の味わいを強く感じさせる」

という特徴があります。


なぜ乾燥するとグアニル酸が生まれる?

ここが、しいたけの面白いところです。

生しいたけの細胞の中では、グアニル酸を作るために必要な物質と酵素が、細胞膜によって隔てられています。

ところが、しいたけを乾燥すると細胞膜が壊れ、両者が接触しやすくなります。

その後、水分が戻ることで酵素が働き、グアニル酸が作られる準備が整います。

つまり、

生しいたけ

乾燥

細胞構造が変化

水分が戻る

酵素が働く

グアニル酸が生成

という流れがあります。

「干すことでうま味が増す」と言われる理由のひとつが、ここにあります。

しいたけは乾燥することで、うま味だけでなく風味や香りも変化します。乾燥度合いによる違いについては、こちらの記事「しいたけの風味は乾燥度合いでどう変わる?」で詳しく紹介しています。


なぜ「加熱」が重要?

乾ししいたけを冷たい水に戻しただけでは、グアニル酸は十分には増えません。

大分県椎茸農業協同組合の説明では、約5℃の冷水では酵素の働きが弱く、60~70℃付近になると酵素が強く働いてグアニル酸が増えるとされています。

つまり、

「冷たい状態で戻す」ことと、
「その後に加熱する」ことには、それぞれ役割があります。

冷水で戻すことで、グアニル酸を作るための準備をしながら、加熱時に生成されるグアニル酸を活かしやすくする。

そして、その後の加熱によって、グアニル酸が増えていきます。


加熱しなかったらどうなる?

ここは、パウダーを使う場合にも気になるところです。

乾ししいたけを水戻ししただけで、すぐにグアニル酸のうま味が最大になるわけではありません。

研究・解説では、低温で戻した後に加熱することでグアニル酸が増えることが示されています。逆に、適切な条件で加熱しなければ、乾しいたけの「グアニル酸を増やす」という変化は十分に起こりません。

つまり、

「乾しいたけを粉にした=加熱しなくても、必ずグアニル酸のうま味が最大になる」

ということではありません。

ここは、しいたけパウダーを使うときにも知っておきたいポイントです。


パウダーを冷たい料理に使ったら?

ここで、少し不思議な体験があります。

しいたけパウダーをバニラアイスに加えるという使い方です。

「しいたけとアイス?」

と思うかもしれません。

実際にしいたけ粉をバニラアイスに加える食べ方は紹介されており、うま味の相乗効果によって味わいが変化する可能性が説明されています。

そして、実際に試してみると、

「しいたけの味がする」というより、バニラの風味が強くなったように感じる。

そんな変化を感じることがあります。

これは、Mush takeでも実際にバニラアイスにしいたけパウダーを加えてみて感じたことです。


しいたけを入れたのに、なぜバニラが強く感じる?

グアニル酸には、グルタミン酸などと組み合わせることでうま味を強く感じさせる「相乗効果」があります。

そして、うま味は単純に「しょっぱい」「甘い」といった一つの味だけではなく、食べ物全体の味わいや満足感にも関係しています。

実際、味覚研究では、グルタミン酸と他の風味成分が組み合わさることで、単純な足し算以上に「おいしさ」や風味の感じ方が変化することが報告されています。

また、グルタミン酸と核酸系のうま味成分が組み合わさると、うま味受容体での反応が強くなることも研究されています。

そのため、しいたけパウダーそのものが「バニラ味」を作るというより、

しいたけ由来のうま味成分が、アイスに含まれる味や香りと組み合わさり、全体の風味の感じ方が変わったと考える方が自然です。

「バニラ感が強くなった」という実際の感覚を、こうしたうま味の働きから考えることができます。


これはアイスだけの話ではない

この考え方は、普段の料理にもつながります。

例えば、

  • トマト
  • 味噌
  • チーズ
  • 野菜
  • スープ
  • 卵料理

など、さまざまな食材にはそれぞれのうま味成分があります。

そこにしいたけのグアニル酸が加わることで、他のうま味成分との相乗効果が生まれる可能性があります。

昆布と干ししいたけを組み合わせた出汁が昔から使われてきたのも、その一例です。

しいたけを「しいたけ味にするため」に使うのではなく、「その料理が持っている味を、より豊かに感じるために使う」という考え方もできます。


もうひとつの成分レンチオニン

しいたけの魅力は、うま味だけではありません。

乾しいたけには、独特の香りがあります。

その代表的な香り成分のひとつが、レンチオニンです。

レンチオニンは、しいたけの乾燥過程や水戻し、調理などで生成する成分として知られています。農林水産省の資料でも、乾しいたけ特有の香りに関係する成分として紹介されています。

つまり、しいたけのおいしさには、

グアニル酸=うま味

レンチオニン=特徴的な香り

という、異なる要素があります。

乾しいたけを料理に使ったときに「味が濃くなった」と感じるのは、単純にうま味成分だけではなく、香りの変化も一緒に感じているからかもしれません。


「うま味」と「香り」は別々に考えると分かりやすい

成分主な役割しいたけで感じること
グアニル酸うま味味に厚み・奥行きを感じる
レンチオニン香り乾ししいたけらしい香り
グルタミン酸うま味他のうま味成分との相乗効果
イノシン酸うま味グアニル酸などとの相乗効果

しいたけの「おいしさ」は、一つの成分だけで決まっているわけではありません。

味・香り・食感。

それぞれが重なって、私たちは「おいしい」と感じています。


しいたけパウダーではどう考えればいい?

パウダーにすると、しいたけを細かく分散させることができます。

そのため、料理の一部分だけではなく、料理全体にしいたけ由来の成分を行き渡らせやすくなります。

ただし、

「パウダーだから、加熱しなくてもグアニル酸が新たに最大量まで増える」

という意味ではありません。

乾しいたけ由来のグアニル酸をすでに含むパウダーなら、加熱しない料理でも、その成分によるうま味の効果を考えることはできます。

一方、料理に加えて加熱する場合には、乾しいたけの成分や酵素、温度などが関係して、さらに味わいが変化する可能性があります。

つまりパウダーは、

「加熱しないと意味がない」ものでも、
「加熱すれば必ずうま味が増える」ものでもありません。

料理の温度や組み合わせによって、違った楽しみ方ができる素材です。

しいたけパウダーを実際に料理へ加えるタイミングについては、こちらの記事「しいたけパウダーの使い方」で詳しく紹介しています。


しいたけのうま味は「足す」だけではない

しいたけパウダーを料理に加えると、

「しいたけの味を足す」

と考えがちです。

でも、実際にはそれだけではないかもしれません。

グアニル酸のような核酸系のうま味成分は、グルタミン酸などと組み合わさることで、うま味の感じ方を強めることが知られています。

そのため、

しいたけの味を前面に出すのではなく、料理にある味を引き立てる。

そんな使い方もできます。

バニラアイスに加えたときに「しいたけ味」ではなく「バニラ感が強くなった」と感じたという体験も、この「料理全体の風味の感じ方が変わる」という考え方で見ると、興味深い現象です。

もちろん、バニラアイスでの感じ方は、アイスの成分や使用量、個人の味覚などにも左右されるため、すべてのアイスで同じ結果になるとは限りません。


しいたけは「味を足す食材」から「味わいを引き出す素材」へ

しいたけのうま味を調べていくと、面白いことが分かります。

しいたけを使う目的は、必ずしも

「しいたけの味を強くすること」

ではありません。

グアニル酸が他のうま味成分と組み合わさることで、料理全体のうま味の感じ方が変わる。

レンチオニンなどの香り成分が加わることで、さらに風味の印象が変わる。

そして、食材そのものの味や香りと組み合わさることで、私たちが感じる「おいしさ」も変わっていきます。

だからこそ、しいたけは昔から出汁として使われてきたのかもしれません。

しいたけのうま味を足す。

そして、

その料理がもともと持っている味を引き立てる。

その両方を楽しめるのが、しいたけという食材の面白さです。


広がるしいたけの楽しみ方

生しいたけを焼いて食べる。

乾しいたけを戻して出汁を取る。

そして、乾しいたけを粉末にして、料理に少し加えてみる。

同じしいたけでも、形が変われば役割も変わります。

そして、時には「しいたけを入れたのに、しいたけではない味が強く感じられる」ということも起こります。

しいたけは、味を主張するだけの食材ではない。

料理の中で、他の食材と組み合わさりながら、全体の味わいを変えていく食材です。

参考資料


農林水産省では、しいたけのグアニル酸や乾しいたけのうま味、レンチオニンについて紹介しています。

また、味覚研究では、グルタミン酸と核酸系のうま味成分による相乗効果や、うま味が食品全体の風味の感じ方に影響することが研究されています。

農林水産省「おいしいきのこ図鑑:しいたけ」

農林水産省「だしとうま味」

農林水産省「乾しいたけ特有の香りについて」

PubMed「Umami the Fifth Basic Taste」

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