菌床しいたけの休養中に散水は必要?散水回数と発生量の関係を研究から解説

 菌床しいたけは、1回目の発生(芽が出ること)・収穫が終わった後に「休養」させ、再び浸水して次の発生を促すというサイクルを数回繰り返すことができます。

 ところが、栽培方法について調べてみると、休養中の管理について詳しく説明した情報は意外に多くありません。「1~2週間程度休養させる」「休養中に時々散水する」といった説明は見かけますが、どの程度の散水が、その後の発生にどのような影響を与えるのかは分かりにくいところがあります。

 そこで今回は、休養中の散水と休養期間について調べた研究論文を見つけたので、その内容を紹介します。

論文で行われた試験

 今回参考にしたのは、有馬忍氏による「除袋後および休養中の水分管理条件が菌床シイタケの発生に及ぼす影響」です。

 この研究では、クヌギチップを使用した菌床と森XR-1号を用い、除袋後の水洗処理、休養期間中の散水回数、休養期間の長さが、その後のしいたけの発生にどのような影響を与えるかを調べています。

 発生室は12~22℃の変温管理とされ、1回目の発生後には、次の発生を促すために菌床を6時間浸水しています。休養期間中の散水は、棚に固定したスプレーノズルから水道水を噴霧する方法で行われました。

 つまり、この研究は単純に「水をかければしいたけが増えるか」を調べたものではありません。

 休養中に菌床の水分状態をどのように管理すると、次の発生を安定させられるのか

という視点から行われた試験です。

休養中の散水について

 特に興味深いのが、1回目の発生が終わってから次の浸水までの4週間について、散水回数を変えた試験です。

 散水条件は、

  • 無散水
  • 週1回
  • 週3回
  • 週5回

の4条件。

 散水は1回につき2時間行われました。

 その結果、2回目の発生個数と発生量は、散水回数が増えるほど多くなる傾向が見られました。

 無散水では2回目の発生量が72.2gだったのに対し、週1回では175.4g、週3回では202.4g、週5回では238.4gとなっています。

 つまり、休養中に散水を行うことは、次の発生を確保するうえで一定の効果があると考えられます。

「散水するほど良い」わけではない

 ここで注意したいのが、散水回数を増やせば増やすほど良いわけではないという点です。

 週3回と週5回を比較すると、2回目の発生個数や発生量は週5回のほうが多くなりました。

 一方で、LM規格(L+M)の個数には大きな差がありませんでした。研究では、散水によって増えたのは主にS規格以下の小型のしいたけであり、過剰な散水はしいたけ1個あたりの大きさに悪影響を及ぼす可能性があると考察されています。

 これは非常に重要なポイントです。

 「発生個数を増やす」ことと「商品になる大きさのしいたけを増やす」ことは、必ずしも同じではありません。

 散水量を増やすことで発生数だけを増やしても、小型のしいたけが増えれば、収穫・選別の手間に対してメリットが小さくなる可能性があります。

週3回が一つの目安

 この試験では、1回2時間の散水を週3回行うことで、LM規格の個数を大きく落とすことなく、十分な発生量が得られました。

 研究では、休養中の散水条件として「1回2時間、週3回」が一つの効率的な条件として示されています。

 ただし、これはあくまで今回の試験条件における結果です。

 菌床の種類、菌株、培地の含水率、発生室の温度・湿度、風量、散水方法などが変われば、必要な水分管理も変わると考えられます。

 したがって、

「週3回・2時間が、すべての菌床しいたけ栽培における絶対的な正解」

と考えるのではなく、休養中の水分管理を考える際の一つの参考値として見るのが適切です。

休養期間は長ければ良いか?

 もう一つ興味深いのが、休養期間そのものについての試験です。

 1回目の収穫が終わってから次の浸水までを、

  • 3日
  • 10日
  • 17日
  • 24日

と変えて、その後の発生を比較しています。

 10日区では2回目の発生が多い傾向が見られましたが、統計的に有意な差は認められませんでした。

 また、3回目以降についても、3日区と24日区の間で発生量などに有意な差は認められませんでした。

 この結果から、この試験条件では、休養期間を長くしたことによって、その後の発生量が明確に増えるとはいえないことが分かります。

休養期間を管理する必要がある

 では、休養期間は短くても長くても構わないのでしょうか。

 そう単純ではありません。

 研究では、休養期間が長くなると、その間にしいたけが発生することが確認されています。また、発生室の構造や温度制御方法は生産現場によって大きく異なるため、それぞれの現場に合わせて浸水や散水のタイミングを計画する必要があるとしています。

 つまり休養とは、単純に「○日間何もしない期間」ではありません。

 次の発生に向けて菌床の状態を整えながら、次の浸水・発生のタイミングを調整する期間

と考えたほうが分かりやすいでしょう。

 休養期間を長くしすぎれば、その間に自然に芽が動き始める可能性があります。逆に、短すぎれば、栽培施設の条件によっては計画した発生サイクルと合わなくなることも考えられます。

除袋後の「水洗い」と「散水」は別に考える

 この研究では、休養中の散水とは別に、除袋直後の菌床を水洗いしながら手やブラシで擦る処理についても調べています。

 その結果、菌床表面を水洗いしながら手やブラシで擦る処理では、その後の発生量が減少する傾向が見られました。

 90日培養の菌床では、手で擦る処理によって1~3回目の発生量が対照区より約30%減少しました。また、111日培養の菌床ではブラシで擦る処理によって同様に約30%減少しました。

 一方、除袋後の菌床に10秒間散水するだけの処理では、しいたけの発生への影響は小さいとされています。

 ここは「除袋後は散水してはいけない」という意味ではありません。

 重要なのは、

水をかけることと、菌床表面を強く擦ることは別の操作である

ということです。

 菌床表面を洗いながら手やブラシで擦ることによって、発生に必要な菌床表面の状態まで変化させてしまう可能性があります。

休養中の水分管理で考えたいこと

 今回の研究から見えてくるのは、休養中の水分管理では「乾かさないこと」だけを考えればよいわけではないということです。

 散水をしなければ2回目の発生量が少なくなりました。

 一方で、散水回数を増やしすぎると小型のしいたけが増え、LM規格の個数を増やす効果は限定的でした。

 つまり、

少なすぎても、多すぎても良くない。

 次の発生に必要な水分を確保しながら、どの程度の大きさのしいたけを、どのタイミングで発生させるのかを考える必要があります。

 休養中の散水は「水を与えてしいたけを育てる」というより、次の発生に向けて菌床の水分状態を維持・調整する管理と考えると理解しやすいでしょう。

まとめ

 今回紹介した研究では、1回目の発生後の休養期間中に散水を行うことで、次の発生個数・発生量が増加しました。

 特に、1回2時間の散水を週3回行った条件では、LM規格の個数を大きく落とさず、十分な発生量が得られました。一方、週5回まで散水回数を増やすと発生個数・発生量は増えましたが、その増加は主にS規格以下の小型のしいたけによるものでした。

 また、休養期間を3日、10日、17日、24日と変えても、その後の発生量に明確な差は確認されませんでした。ただし、休養期間が長くなるとその間にしいたけが発生することがあり、施設の温度・湿度条件なども生産現場によって異なるため、休養期間は一律の日数で決めるのではなく、計画的に管理する必要があります。

 そして、除袋後の菌床については、10秒程度の散水そのものの影響は小さい一方、水洗いしながら手やブラシで菌床表面を擦る処理は、その後の発生量を減少させる可能性があることにも注意が必要です。

 この研究を参考にすると、休養中の水分管理は、

「できるだけ水を与える」のではなく、「次の発生に必要な水分を保ちながら、発生量としいたけの大きさのバランスを取る」

ことが重要だと考えられます。

 ただし、今回の研究は特定の菌株・菌床・温度条件で行われたものです。そのため、実際の栽培ではこの数値をそのまま当てはめるのではなく、自分の菌床での発生状況を記録しながら、散水回数や休養期間を調整していくことが重要でしょう。

参照文献
除袋後および休養中の水分管理条件が菌床シイタケの発生に及ぼす影響

 この論文では、休養中の散水だけでなく、除袋後の水洗・擦り処理、休養期間、発生量・発生個数・LM規格の変化まで比較されています。特に「散水量を増やせば収量も単純に増えるわけではない」という点が、実際の栽培管理を考えるうえで興味深い研究です。

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